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早稲田大学「きもの学2013」 銘仙とその時代 -昭和戦前期の着物文化- [着物文化論]

早稲田大学オープン教育講座「きもの学2013」(第7回)   2013.11.14

銘仙とその時代 -昭和戦前期の着物文化-

                       講師 三橋 順子

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↑ (画像1)秩父銘仙のポスター(昭和初期)。
人気女優をモデルに、一流画家に描かせた。

1 「銘仙の里」(埼玉県秩父市)に生まれて
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↑ (画像2)私が生まれた頃(昭和30年=1955)の秩父の街。
大通りには織物関係の問屋や買い継ぎ商の店が並んでいた。

 ・ 着尺の生産は大正末期から急増、昭和初期(1926~37)が全盛
 ・ 昭和30年代(1955~64)が生産量のピーク(着尺から布団皮へ)
   鋸型屋根の大きな建物(機屋) 
   ジャッカジャッカという自動織機の音
   一面の桑畑 
   糸干し場の五彩の滝
   溝を流れる五色の水 → 化学染料の排水 → 公害
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↑ (画像3)秩父市郊外の織物工場。立派な長屋門がある敷地に鋸屋根の工場がある。
地元有数の旧家が織物産業に転じたことがわかる。門の前には桑畑が広がる。

 ・ 昭和40年代(1965~74)以降、急速に衰退 → 地元でも、ほとんど忘れ去られる
 ・ 2002年1月「ちちぶ銘仙館」開館。
   実物の機械を用いた解し織り技法の解説、秩父銘仙全盛期の着尺や着物を展示 
    → ようやく、再評価へ
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↑ (画像4)「ちちぶ銘仙館」(秩父市熊木町)
秩父銘仙全盛期の昭和5年(1930)に秩父絹織物同業組合により「秩父工業試験場」として建てられ、昭和初期様式の建造物として国の登録有形文化財に指定されている。

2 昭和戦前期(1926~36)の着物文化
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↑ (画像5)昭和7年(1932)の東京銀座4丁目交差点。
男女とも和装・洋装などいろいろな服装の人が行き交い、昭和初期のファッションの多様性がうかがえる。
石川光陽『昭和の東京 ―あのころの街と風俗―』(朝日新聞社、1987年)

・ モダンガールの洋装に目を奪われがちだが…
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↑ (画像6)洋装のモダンガールと連れ立っているお嬢さんは、麻の葉模様の大振袖。
おそらく銘仙と思われる。
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↑ (画像7)薄い青鼠色の地に少し暗い赤で大きな麻の葉模様を織り出した銘仙。
昭和初期の秩父銘仙か?(モデル&所蔵:YUKO)
  (モデルさん登場 1回目 麻の葉柄の銘仙)
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銀座1932年(拡大2).jpg
↑ (画像8) 半ズボンの男の子を釣れたお母さんは縞銘仙か、縞お召? 
袴姿の女学生は着物はアールデコの銘仙か?
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↑ (画像9) 縞お召(京都西陣)

・ 大衆絹織物(銘仙・お召)の大流行 → 日本の和装文化の全盛期
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↑ (画像10) 桃色と浅葱色のツートンカラーの銘仙
桃色と浅葱色という正反対(色相環で正反対に位置する補色関係)のツートンカラーの地色に(間に細く白を染め残す)、黒で2パターン(潰しと細い縞柄)の変形四角形を織り出す。
織は緻密できわめて細かいシボがあり、全体に強い玉虫光沢がある。
色の彩度が高く光沢があるので、現代でいう「蛍光色」のように見える。
(モデル&所蔵:YUKO)
http://junko-kimono.blog.so-net.ne.jp/2012-09-13-19

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↑ (画像11) 片輪車文様の青紫の銘仙
鮮やかな青紫の地に、大きな片輪車模様と抽象化された水波を織り出す。
片輪車は、牛車の車輪が乾燥し割れるのを防ぐため水に漬けた平安時代の情景を文様化したもの。
車輪は白で抜き、縁と接合線を鼠色と黄色で、車軸の回転を朱赤で表現する。
白と薄紫で織りだされた水波はかなり抽象化されていて、唐草模様のようにも見える。
(モデル&所蔵:にゃんこ)
http://junko-kimono.blog.so-net.ne.jp/2012-09-13-21
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↑ (画像12) 椿の銘仙(羽織)
赤、黄、白で図案化された大きな椿の花を織りだす。花芯は緑青。
地は青緑を太い黒線で区切りその中に斜線を入れる。
花には部分的に「霞」をかけている。
(モデル&所蔵:sakura)
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↑ (画像13) 多色使いの前衛柄の銘仙
緩い曲線と直線で大小不規則に区分けされた言葉では表現できない前衛的な模様を織り出す。
色はきわめて多彩。
無彩色が、黒、濃鼠、鼠色、薄鼠、白の5色。赤系が、暗赤、朱赤、濃ピンク、薄ピンクの4色。
茶系が、茶色、濃黄土、薄黄土、樺色の4色。さらに藍色が入り、計14色。
(モデル&所蔵:YUKO)
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↑ (画像14) 赤椿の銘仙。
青紫の地に、赤で大きく椿の花を、青緑色で葉を表現する。
椿の表現は写実的ではなく意匠化が進んでいるが、大きな柄と大胆な色味は、銘仙全盛期の特色。
(モデル&所蔵:順子)

3 銘仙とは
(1) 北関東の風土から生まれた織物
 ・ 先染(糸の段階で染める)、平織(経糸と緯糸の直交組織)の絹織物
 ・ 古くは「目千」などと表記し、玉繭などから取った節糸(商品にはならない)を天然染料で染めた堅牢な自家生産品
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↑ (画像15) 左が一匹の蚕が作った通常の繭、中央が2~3匹の蚕が1つの繭を作ってしまった玉繭。
玉繭は複数の蚕が吐いた糸が複雑に絡まっているので、一本のきれいな糸にならない。
右のように蚕が羽化して繭を破って出てしまった繭(出殻繭)も糸が切れてしまう。
いずれも、商品として出荷できる生糸にならない。
 ・ 養蚕地帯(生糸産地)である北関東の風土から生まれた織物
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↑ (画像16) 商品にならない屑繭から自家で糸を紡ぎ、機で織るのは女性の仕事(昭和30年代の秩父の山村)

(2) 最初の大衆向け絹織物製品
 ・ 明治末期~大正時代前期(1910年代)に工場生産化
  人工染料で経糸に着色、絹紡糸を緯糸に使い、力織機で織りあげる
  → 大幅な省力化によるコストダウン、工場による大量生産・大量流通
  → それまで経済的に絹織物を着られなかった階層(木綿を着ていた)にも普及
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↑ (画像17) 秩父市道生町に残る鋸屋根の織物工場(撮影:2002年)

 ・ 銘仙の種類
  ① 縞銘仙
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↑ (画像18) 臙脂と銀鼠の縞銘仙
臙脂、銀鼠、黒の三色のシンプルな縦縞だが、縞の太さを測定してみると、4・2・1・2・1・2・4という整数比になっている。
縞の太さをリズムミカルに変えることで、粋な雰囲気を出している。
縞銘仙は、銘仙の中でもっとも技法的に単純なだけに、縞の色、配列、太さでセンスが問われる。
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  ② 絣(かすり)銘仙
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↑ (画像19) 黄色と黒と臙脂の大矢絣模様の銘仙
伝統的な技術・意匠だが、色の組み合わせが大胆。

  ③ 模様銘仙(解し織)
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↑ (画像20) 夏水仙の銘仙
暗い青紫の地に淡黄色と緑で陰陽(ネガ・ポジ)2パターンの水仙の花を織り出す。
経糸のみを捺染した解し織り技法で、緯糸は暗紫。
花の形の崩れは少なく、技術レベルは高い。
経糸に生糸のセラシンを少し残したシャリ感のある糸を用いる。
単に仕立てられていることから、夏水仙をデザインした初夏用の銘仙と思われる。
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(3) 都市大衆消費文化の目玉商品
 ・ 昭和初期(1926~37)にデパートなどが産地と提携した展示会などで「流行」を積極的に演出 
   [銀座] 松坂屋(1924)、松屋(1925)、三越(1930) 
   [新宿] 三越(1929)、伊勢丹(1933)
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↑ (画像21) 昭和8年(1933)の松坂屋「新柄・秩父銘仙宣伝会」の新聞広告 
 ・ (中産階層なら)1シーズン1着が可能な値段
    昭和8年秩父産の「模様銘仙 5円80銭~6円50銭」 
     → 現代の21000~24000円ほど
 ・ 「流行」に応じるために産地(伊勢崎、秩父、足利、八王子など)の熾烈な競争

4 華麗・豊富な色柄、最先端の前衛的デザイン
(1)「解し織」の導入
 ・ 多彩な色柄を細かく織り出すことが可能に
 ※ 解し織(ほぐしおり) 
   経糸をざっくりと仮織りしてから型染め捺染し、織機にかけ仮糸を解しながら、緯糸を入れる。
   明治42年(1909)に伊勢崎で技術開発
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↑ (画像22)  経糸を整え、ざっくり仮織りし、型染め捺染をして、機に掛けたところ。
ここから仮糸を解しながら、、緯糸を入れて織り上げていく(「ちちぶ銘仙館」の絵葉書)。

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↑ (画像23) 解し織の説明図。
こんな感じで、ごくざっくり仮糸を入れ、経糸のずれを防ぐ。

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↑ (画像24) 織り上がった萩の柄の銘仙
ただし、これは足利銘仙。
秩父と足利でなぜ同じ柄があるのだろうか?
意匠登録の制度がない時代、各生産地がデザインを模倣し合うことは珍しくなかった。

(2) 伝統的意匠のリニューアル
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↑ (画像25) 赤い折鶴の銘仙
一幅に一柄の大きな赤い折鶴を織り出す。
今にも羽ばたいて自力飛行しそう。
地色は薄鼠色ながら、強い玉虫光沢があり、光線の具合によって赤鼠色から青鼠色に変化する。
「玉虫」は秩父銘仙の得意技。
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↑ (画像26)  銀鼠の地に紅梅を織り出す。
花は紅色の濃淡、輪郭と花芯は黒。枝は黒、一部に薄緑。
併用絣の技法で、日本画風の紅梅を見事に表現している。
樹皮についた苔の表現や、梅の花の周囲の地色を白く抜くなど技巧は細かい。
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(3) ヨーロッパ最新デザイン(アール・ヌーボー、アール・デコ)の導入
 ・秩父でも上野の美術学校(現:東京芸術大学)の卒業生に基本デザインを依頼
   ① アール・ヌーボー風の銘仙
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↑ (画像27) チューリップの銘仙
黒の地にアールヌーボー風のチューリップを織り出す。
葉は濃淡のピンクと青緑色、葉脈は黒。
花は黄色・白鼠色・青緑色で、花茎は白鼠色で表現。
典型的かつ高度な解し織り技法による模様銘仙。
ヨーロッパ移入のデザインと日本の染織技術が合致した銘仙全盛期の傑作のひとつ。 
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↑ (画像28) 薔薇と円弧紋の銘仙
サーモンピンク(薄桃)の地に洋画風の赤薔薇と円弧文を織り出す。
薔薇の花は濃淡の紅色と黄土色、葉は緑と黄土色、鼠色で影をつける写実的な表現。
円孤文は桃色を基調。2パターンがあり、いずれも同心円で3区に分ける幾何学的文様。
中心に6弁花紋、外区に三角紋を置き、内区はパターンの異なる花紋。
直交組織では表現が難しい細かな円弧紋だが、文様の乱れは最小限に止まる。
デザイン、染織ともにハイレベルで、伊勢崎銘仙、最盛期の作例と思われる。
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↑ (画29) 花と蝶模様の空色の銘仙
あざやかなシアンブルー(空色)の地に、花と蝶の模様を染め抜き風に織り出す。
蕾(実?)に赤紫色を添える。
花はケシか、蝶はアゲハで、全体にアールヌーボー風のデザイン。
全体に弱い玉虫光沢がある。
(モデル&所蔵:にゃんこ)
http://junko-kimono.blog.so-net.ne.jp/2012-09-13-18
  (モデルさん登場 2回目 チューリップの銘仙)

   ② アール・デコ風の銘仙
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↑ (画像30) 交差するリボンの赤銘仙
真っ赤な地に複雑に折れ曲がり交差するリボン?を織り出す。    
リボンは、黒で縁取り、中に灰色で9本の細い平行線。
交点は斜交したり直交したり。交点の内部は格子状。
強烈な赤の地色と大胆でモダンな柄の組み合わせは、かなりのインパクトがある。
いったいどんな人が着たのだろうか?
技術的には、斜め線をきれいに織り出していて、精度は高い。
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↑ (画像31) 赤と白の折れ線の銘仙
3分の2幅は黒地に赤と白の太い折れ線模様を織り出す。
赤と白はある部分は寄り添い、ある部分では交差する。
残り3分の1幅は白地に黒で透垣(すいがき)のような模様を織り出し、そこに黒の細い折れ線を配す。
全体に黒と薄鼠の大胆な切り分け、そこに走る赤と白の折れ線模様が印象的な典型的なアール・デコの意匠。
http://junko-kimono.blog.so-net.ne.jp/2012-12-25

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↑ (画像32) 松葉の銘仙。
錆朱と藍色の扇状の線は松葉を横から見た状態の意匠化。
黄色の芯がある暗い藍色の放射状の柄は、松葉の集合を真上から見た状態の意匠化。 
松葉という日本の伝統的意匠を巧みにアールデコ・デザイン化した傑作。

(4) 曲線や円形、最新デザインを直交組織の織物で表現する職人技
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↑ (画像33) 蛇の目傘模様の銘仙
黒地に意匠化された2種類の蛇の目傘を織り出す。
青緑色と黒の傘4つに、やや大ぶりの銀鼠色と赤の笠1つの割で配す。
緯糸は黒だが、一部にアクセントとして銀糸を入れている。
経糸のみの捺染で、曲線が多い蛇の目傘の意匠を見事に表現している。
また、突き出た傘の骨先の色処理など芸が細かい。
デザイン・染め・織りともに高い技術レベルの銘仙全盛期の優品。
http://junko-kimono.blog.so-net.ne.jp/2012-09-13-9

5 銘仙のイメージ
(1)大正~昭和戦前期
 ・ 「(中産階層の)お嬢さんの普段着、女中さんの晴れ着」
 ・ 職業婦人の仕事着 ---- 女教師の銘仙+女袴(行燈袴)、牛鍋屋の仲居の赤銘仙、
              カフェの女給の銘仙+白エプロン
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↑ (画像34) 薄桃色に赤と黒の菱形模様の銘仙
薄桃色の地に斜めに交差する朱色の階段状の線を織り出す。
階段は一定ではなく、階段線で区画される菱形は一定ではない。
菱形の装飾は2種類。 
地色が薄い色なので、赤と黒の菱形模様がよく目立つ。
アールデコの影響を受けながら、かわいらしさが十分に感じられるデザイン。
きっと若い娘さんが着たのだろう。
(モデル&所蔵:YUKO)
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(2)昭和戦後期
 ・ 「赤線」(黙認買売春地区)の「女給さん」(実態は娼婦)が愛用
   自分を「広告塔」にする女性には、大柄で色鮮やかな模様銘仙は絶好のアイテム
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↑ (画像35) いろいろ模様貼り合わせの銘仙 
花・枝・実の植物柄と白、赤のパッチワーク風の銘仙。
花柄はあまり目立たず、赤の部分の印象が強く、全体に明るく華やかな印象で、かなり人目を引く。
旧・赤線「鳩の街」の娼館建築の前で「赤線の女」を再現撮影(2010年)
(モデル&所蔵:YUKO、撮影:順子)
  (モデルさん登場 3回目 多色前衛柄の銘仙)
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6 急速な衰退
 ・ 戦後、銘仙の主な着用層だった「お嬢さん」、職業婦人が真っ先に洋装化
 ・ 粗悪品の流通によるイメージ低下(緯糸に人絹を使用 → 張力・雨に弱い)
 ・ 赤線女給の着用による性的なイメージが嫌われた?
 ・ 高度経済成長期における、きもの文化の多層性の崩壊
   礼装・社交着としての着物は残る
   街着・家内着・労働着としての着物(お召、銘仙、木綿)は衰退
   紬は高級化・社交着化
 ・ 生産技術の断絶 → 工場生産品ゆえに、伝統工芸・美術品にならなかった

7 21世紀初頭の「銘仙」ブーム
 ・ 2000年代のアンティーク・きものブーム
 ・ デザイン性に富んだ銘仙の派手な色柄が再注目
 ・ 大正・昭和初期のきもの文化の再評価
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↑ (画像36) 「うきうききもの」秩父銘仙オフ会(「ちちぶ銘仙館」、2000年4月)
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↑ (画像37)京都古布保存会「京都に残る100枚の銘仙展」(東京世田谷「キャロットタワー」、2005年3月) 
(モデル&所蔵)左から、小紋、YUKO、順子、めめ

 ・ 地味=上品に固定化された着物、厳格な着物着用規範への反発
 ・ インターネットによる情報流通の増大 → 着物を着て楽しむ場の増加)
 ・ 伝統的な着物文化を意識しつつ、好きな着物を着たいように着る
   → 規範からの自由、創意工夫

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三橋 順子(みつはし じゅんこ) 
1955年「銘仙の里」埼玉県秩父市に生まれる。性社会・文化史研究者。都留文科大学・明治大学・東京経済大学非常勤講師、早稲田大学ジェンダー研究所嘱託研究員、国際日本文化研究センター共同研究員。専門はジェンダー/セクシュアリティの歴史、とりわけ性別越境(トランスジェンダー)の社会・文化史。著書に『女装と日本人』(講談社現代新書 2008年)、共著に『性の用語集』(講談社現代新書 2004年)、『戦後日本女装・同性愛研究』(中央大学出版部 2006年)、『性的なことば』(講談社現代新書 2010年)など。主な論文に「往還するジェンダーと身体-トランスジェンダーの経験-」(講座・身体をめぐるレッスン第1巻『夢見る身体Fantasy』 岩波書店 2006年)、「性と愛のはざま-近代的ジェンダー・セクシュアリティ観を疑う-」(『講座日本の思想第5巻 身と心』岩波書店、2013年)など。きもの関係の著述は、「艶やかなる銘仙」(『KIMONO姫』2号 2003年 祥伝社)、「銘仙とその時代」(『ハイカラさんのおしゃれじょうず-銘仙きもの 多彩な世界-』日本きもの文化美術館 2010年)、「順子のきもの想い語り」(http://www4.wisnet.ne.jp/~junko/1/7.htm)など。